Vol.1 第2回女子日本リーグ決勝トーナメント レポート

「SEIBUプリンセスラビッツ」 vs 「フルタイムシステム御影グレッズ」

●相手のハードチェックに苦しみながらも、主力が輝きを放った準決勝

SEIBUプリンセスラビッツ 5(1−0、2−0、2−1)1 フルタイムシステム御影グレッズ

<GOAL> 
09:23 ラビッツ G20久保
33:39 ラビッツ G11 足立 A23中村 10近藤
39:00 ラビッツ G11足立  A23中村
43:45 グレッズ G17太田 A11阿部
48:14 ラビッツ G22岩原 A14床(秦)
53:27 ラビッツ G22岩原 A14床(秦)

久保、中村、足立。ラビッツのエースが十二分に持ち味を発揮した試合となった。

2回にわたる予選リーグでは合わせて8戦全勝と堂々の1位で決勝トーナメントを決めたラビッツが、帯広の森スケートリンクへ乗り込んだ。決勝トーナメント初戦の相手はグレッズ、帯広のある十勝地区をホームとする地元のチームだ。

第1ピリオド序盤、先にペースを掴んだのはグレッズだった。ハードなチェックと走り負けない体力を強化してここ数年急激に力を付けてきたグレッズ。地元開催と言うことで気合いが乗っているのか、この試合でも開始早々から走り回りラビッツを守勢に追い込む。4分過ぎにはグレッズのパワープレーからチャンスを作られ、ゴール前で合わせられたパックがポストをかすめるといった危険なシーンも何度かあった。
やや固さも見えた重苦しい雰囲気の序盤戦。そんな展開を一気に打破したのはやはりエースの一振り。久保のゴールからだった。

アタッキングゾーン奥の左コーナー付近で相手DFとのもみ合いを制した久保は左のフェイスオフスポット近くまでドリブルしながらパックをキープ。そして左45°の角度からスティックを振り抜くと、パックはゴール右隅のポストを叩く心地よい金属音を残しながらゴールに突き刺さった。

「私が決めることでチームが乗っていければいい、と考えていたので、まずは早めに先取点を取れたのが良かった」と久保。持ち味を発揮したエースのゴールは、グレッズを落胆させるに充分だった。

●ゴールゲッター中村の見せるもう一つの顔。絶妙な試合感で流れを呼ぶ

また、中村がプレーでチェンジオブペースを計っていたのも、久保のゴールを生み出す一つの伏線となっていた。
「自分がアタッキングゾーンにパックを持ち込んで、相手が来た時に早め早めに対応すればチャンスは作れると、工夫はしていましたね」と、あえてゆっくり攻めてDFを引きつけるなど、中村はリズムを変化させるプレーを選択。「チームがちょっと相手のスピードに走り負けている感じはあった」(久保)という苦しい時間帯をラビッツのペースに徐々に引き戻した。

「特に頭で考えていたわけではなかったけど、感覚でペースを落ち着かせた方がよいかな、と自然に身体が動いた」という中村のセンスは2点目でも発揮される。
左側のボード際でパックを持ち込みつつ、あえてブルーラインを跨ぎながらストップしてDFを引きつけて、走り込んでくる中央の足立へ完璧なパス。こうなればGKと1対1になった足立は持ち前のシュート力でパックをゴールに流し込むだけだった。
「足立さんが走り込んでいるのは見えていて、私が溜めて彼女を走らせればいい形にできる、と。練習どおりというか、いつもの形ができましたね」(中村)

足立は5分後のパワープレーでも右フェイスオフスポット付近からGKの右サイドを射抜く素晴らしいシュートで2ゴール目。
久保、中村、足立と役者3人がそろい踏みで3−0とリードすれば、もう流れは完全にラビッツのもの。第3ピリオドにはキルプレーから1点は返されたものの、岩原がゴール右の角度のないところから芸術的なゴールを決めて4−1と突き放すなど、後は危なげない試合運びで見事に決勝戦進出を決めた。

●2連覇へ~西武らしいスピードで60分走りきり、強さを見せる

試合後、久保は「西武らしいスピードを60分間最初から最後まで出せれば必ず勝てるチャンスはある。『やっぱり西武は強いんだ』と思ってもらえるようなパフォーマンスを見せたい」と語り、気力充実といった様子。

いっぽう、序盤に固さがあったのでは? という記者の質問に対して八反田監督は「固かったというよりも、相手が良いプレーをし、それに対抗するために合わせていった。試合に慎重に入ったということだと思います」と不安を一蹴。「試合前のミーティングでも立ち上がり5分が大事、と伝えたのでそのあたりをみな考えて動いていたのでは」と選手の対応力を評価していた。

後ほど行われた準決勝のもう1試合は三星ダイトーペリグリンが2−0でDaishinに勝利。ラビッツの決勝戦の相手は三星ダイトーペリグリンと決まった。
「(10/14に行われた)2次リーグで0−2の劣勢から逆転勝ちして、どうやって戦えばペリグリンに勝てるかを選手たちは掴んだと思います。積極的に足を動かしてゴールを狙う、そういうプレーを続けて自分たちのペースでホッケーをやれれば、しっかり勝ちきることができる」と八反田監督も手応えを感じている様子。

最強のライバル、ペリグリンに勝てば日本リーグ2連覇となる。序盤は苦しみながらも先制点以降は王者らしい戦いぶりでしっかり勝利を手にしたラビッツ。自ら作ったこの流れに乗って臨む決勝戦が今から待ち遠しい。

< 2013.11.10 >


関谷 知生(せきやともき)プロフィール

ライターの関谷です。不定期ですが、女子ホッケー&ラビッツに関する情報をアップしていきますのでよろしくお願いします。ホッケーの魅力に惹かれたのは子どものころ。取材者としては2004年の男子アジアリーグ開幕から、女子は2006年から取材しております。個人ブログはhttp://ameblo.jp/ts-starpress/ 。編集プロダクション「スタープレス」(http://starpress.co.jp/)に所属し、雑誌やウェブに記事を寄稿しています。